BCD (二筆描き)コンセプト
BCD名称の由来:Bimanual Coordination Drawing の頭文字からきていますが、ABCのAつまり1 からではなくB 、2から始める、さらに片手ではなく両手から始めるという意味も込めています。
両手協動ドローイング(BCD)は筆記用具を持った両手を同時進行させ、左右双方の手を協動させながら時に合動し時に離動する、ある一定の訓練を伴った、定石の運筆のパターン(コンポジション)を巡って(一致と類似の差異の偶然を積極的に活用する)創作活動を行うものです。両手を同時に用いて左右相似形(鏡面像)を描くものではありません。また、利き手でない方の手を鍛え完璧な両手使い(Bimanual dextrous drawing) を目指すものでもありません。非利き手をある一定レベルの器用さまで馴らす試みはしますが、それは左右双方の手の柔軟性と機動性をより潤滑にし、ある意味で両手を同時に別方向に使うという不完全さを創作の源として使うためです。
BCD は、両手による両手だけが可能な洗練されたパタン(コンポジション)を使った、左右脳を同時に刺激するドローイングのプログラムとも考えられます。
BCDは視覚的リズムの理論(rhythm as composition) に基づいており、それぞれのBCDが作る形とコンポジションは、リズム表現そのものです。ですから純粋な視覚的音楽といってもいいと思います。
BCDは両手を個別にコントロールすることの不可能性に基づいています。両手を個別に違った作業をさせることは不可能に近いですが、別の見方からすると、この不可能性が新しい身体機能の(創造)活動を生み出す源にもなります。
非対称に両手を使う不器用さがBCDの真骨頂です。この不器用さを完全になくする方向でなく、反対に積極的に活用することにBCDのおもしろさがあります。
例えば右手で円を左手で三角を同時に描く。円はいびつになり、三角形は丸みを帯びてくる。これでいいのです。練習によって円はより円に近く、三角形はシャープさが増してきますが、それぞれ完璧な形にはなりません。完璧にならずともそれに至る過程と運筆のフローを楽しむというところに粋があります。
この点でBCDは従来の熟練を目ざす絵画の手引書と違います。BCDは熟練よりも、慣れとなじむことに力点を置き、出発点に於いてプロとアマチュアの差は全くありません。よって、BCDはうまい・へたの区別をしません。おもしろいバランスのよいパタンができることを楽しみにします。それぞれの描かれたパタンは既にあなた独自の作品です。
現在主にアート系の学生の脳力開発に用いておりますが、アートセラピーとしては、従来ある右能を刺激するプログラムという方法を超えて、左右脳両方と脳梁そのものをドローイングという手段を使って活性化させるプログラムでもあります。
ふた筆描き (BCD)は基本的に芸術活動を目指すものですが、その応用は両手両脳の相互関係の刺激による、「脳力」開発のプログラム、アート・セラピー、盲人のドローイングへの新しいアプローチというものが考えられる創造活動です。 パーキンソン(並びにアルツハイマー)患者が両手を使う治療により改善がみられる通り、パーキンソン(アルツハイマー)病状の進行を遅らせる効果が様々な論文で確かめられています。将来、アート系学生の脳力開発向けのワークショップだけでなく、老人認知症予防、脳神経科学への応用が試みられる予定です。
BCDについて
両手を使ってのドローイングは、本来十全な人の身体のバランスを取り戻すもの、そして新しい空間と時間表現を切り開くものと私は信じています。
なぜか両手を使って表現活動をすると幸せな気分になれる。まるで楽器をいじっていた頃に戻ったよう、いや、それ以上に表現行為をしている自分が結果如何に関わらず充実している。こういうフィーリングを与えてくれるのがBCDです。
BはAがアルファベットの一番だとすると、二番です。生命の始まりは一から?私はそうは思いません。生命の始まりは二からだったと私は信じています。BCDはその始まりに立ち会うような未知の感動があります。左右両手は同時には意識して操作できない。だからこそ、身体の動きから学べるところがある。過程や結果から学ぶ。自分の行為の結果の軌跡から学ぶところがある。自分がまき散らしたゴミから発見がある。自分で作ったゴミの山からファウンドオブジェクをする。何も一番にならなくてもいい。二番で十分、いや競争原理など全く関係ない。「成功」?そんなものはない。非テレオロジカル(非目的論的)に過程に集中することのみが大事なのです。しかし、「あそぶ」にはルールはつきものです。BCDは遊びのルールだと考えていただきたい。
自分で描いたものを捨ててはいけません。BCDは例えば陶芸家のように選りすぐりのものだけを残す活動とは少し違う。まがい物も壊さない。とっておいてあとで眺めると、全く違ったイメージが湧き出てくることもあります。これが又端緒になって高次のBCD制作につながっていきます。
両手を使って落書きはできます。又幾何学系の面白い形もできることも多々あります。しかしあとで一度両手で描いたものを再現することは簡単なことではありません。まず、両手の始点はどこかを発見せねばなりません。一度自分で描いたものでも、リバースエンジニアリングのように、出来たドローイングから、左右の後を始点を求めてたどっていくのは大変な作業です。しかし、後でのこの労力の負担を少なくするためにも、ちょっと面白いと思ったBCDパタンは左右の始点だけでもマークしておくことをおすすめします。私の場合、その日のストロークの出だしはあれこれと決めていますので、どんな複雑な形になっても少なくとも始点は分かります。しかし、絡まった紐を解くように、両手で書いた複雑な形を書き順を見出すべく辿っていくのはもどかしいですが、ストロークをイメージしつなげていく過程は、以下でも言及するように左右脳と脳梁を鍛えることになっています。ここで右はこの方向、左はこの方向と頭のなかで両手をあれやこれやと動かしているのですね。両手の動きとイメージ、この関係がBCDの創作の核です。
自分独自のBCDパタンを創る。楽しいですよ。皆様それぞれのBCDドローイングは発見の端緒です。BCDの純粋な行為によるドローイングをお楽しみください。
私が30年間培った、例が示してあります。描き順も明示していますので、気に入った形があったらご自分の手で試してみてください。あなた独自の、経験と経験の積み重ねを通じてしか体験できない新たな感性の広がりと創作意欲が生まれることでしょう。
現在手持ちの「基本コンポジション」が抽象•具象取り合わせ100近くあります。その組み合わせとなると無数です。基本コンポジションの描き順を徐々にこのブログ上に掲載していきます。プラクティショナーとしては、お気に入りの基本パタンの描き順を繰り返し練習し、頭に入れ(内在化し)ふたつ以上の基本パタンを結びつけることを試みてください。思いも掛けない面白い形が現れることがありますよ。この面白さは、私自身が30年もの間飽きもせずに続けていることからも証明できます。
私にとってBCDは視覚的ドラミングであり、作曲活動でもあります。インプロバイゼーションです。すべては視覚的リズムにかかわっています。
アートセラピーとしてのBCD
BCD は両手による両手だけが可能な洗練されたパタン(コンポジション)を使った左右脳を同時に刺激する、アートセラピーです。
従来ある右能を刺激するプログラムという方法を超えて、左右脳両方と脳梁そのものをドローイングという手段を使って活性化させるプログラムです。
BCDはカーマ・ヨガ並びに動的瞑想の考えにも結びついるという見方もあります。これはBCDワークショップに参加したヨガ、禅メディテーション実践者からの感想です。
現在音楽療法との共同作業も模索中であり、その成果はゆくゆくこのブログでも発表していきたいと考えています。
ふた筆描き(BCD)とBCDmatrixについて
現在基本形(BCDmatrix マトリックス- BCDmx )と呼ばれる100程のベーシック・パタンがあります。これらの基本形(BCDmx)は常に追加変更されています。BCDはこのBCDmxを創造開発しその応用を模索するプログラムです。
BCDは両脳並びに脳幹に刺激を途切れなく送り、脳の活性化に繋がるスキルです。このスキルを使って様々な応用を考えています。一種の動的メディテーションで、リラクゼーションに使えます。頭脳先行型の活動でない為に(両手から教えてもらうという態度が大事です)いい気分転換にもなります。芸術セラピーとしてBCDの特徴を生かした活動は無限にあると思います。有望なにメディカルの分野は脳を鍛える新しいアプローチ、老人痴呆症のプリベンション、初期パーキンソンそしてパーキンソン患者のリハビリテーション、とかです。
このふた筆描きの守備範囲としては “Skill Science” とかの研究領域が考えられます。私はこのスキルの科学には大きな未来の展望があると考えています。またこのSkill Science のアートへの応用によって(プロによる排他的活動という)アート自体の取り組みの変容が可能であると信じています。
BCDはまた左右の手を縦横無尽に用いて自動筆記(オートマトン)的にドローイング創作活動を行うものと対極にあります。しかし自由筆記のインプロバイゼーションは捨てがたい。しかし考えてみると、インプロバイゼーションとは落書きや手癖で楽器を操ることではありません。フリージャズだって、それぞれの奏者のフレーズの練習と音楽的イディオムの形成の結果です。BCDはBCDmxを組み合わせてインプロバイゼーションをします。これはビ・バップやジャズのインプロバイゼーションに近いと私自身は感じています。チャリー・パーカーの素晴らしいフレーズとスケールイディオムの組み合わせの超高速演奏、この素晴らしい演奏体験にBCDは近づくことが出来ると信じています。BCDは現在このインプロバイゼーションの段階に近づきつつありますが、この方向では色々なジャンルのパーフォーマー(ダンサー・ミュージシャンを含む)やコンピュータープログラマーとのコラボレーション、リアルタイムでのBCD即興演奏、BCDのドローイングストロークのドローイング媒体から発する音を拾うことによる音響の構成等など将来の展開が楽しみです。皆様BCDワールドへどうぞ。
BCDはじめてしりました、おもしろい。
フォルムで一緒だった、えいちゃん? ボツです。
とても興味深く読ませて頂きました。
自分の突破できないでいる壁を破ってみる一つのきっかけにチャレンジしてみます・・・
Satoh様 コメントありがとうございます。両手を使うという人類始まって以来の古くて新しい問題です。大いにチャレンジしてみてください。
私は20年前に大阪の予備校で先生にお世話になった辰巳というものです。覚えていらっしゃいますか?BCDは当時からされていましたね。拝見してとても懐かしくなりコメントしました。見た目もあまりお変わりありませんね。また機会があれば是非お会いしたいです。